土曜日, 5月 26, 2007

「本当の美しい国。よい想いで空をみたす」-永瀬清子

「美しい国」

この言葉は、安倍総理の著書名に使われて以降、
世間の様々なところで、日本という国の現在の有りようの
評価反省を含めて、議論されています。

私は最近、この「美しい国」という言葉について、
かつて岡山県におられた詩人の永瀬清子さんが
詩にうたっていたことを知りました。

永瀬さんは詩人として多くの人々を勇気づける
数々の素晴らしい言葉を残された方。
母、妻、詩人、女性地位向上のための社会運動、
あらゆる場所に ひっぱりだされ精力的に動かれて、
日々の多忙にありながら 現実と向き合う中での
「人の心を打つ言葉」を世間に放ち、
多くの方を励ますことに己を捧げて生きた
すばらしい方であったそうです。

宮沢賢治の匂いに少し近いものがあるなと
感じたのですが、
後で「農民芸術」の先駆者である賢治に
大きな影響を受けていたと聞きました。

以下は、永瀬さんが1985年5月3日(79歳)の
憲法記念日に岡山県民の集いで話された
講演の一部。

真の民主主義について、世の中の様々な人々の
現実の暮らしをふまえながらすばらしい考えを
お話されています。

「我々はいつも一歩高くなったら、
 一歩新しい問題に直面している  
 ことを知らねばならないのですよ。  

 「戦争は嫌だ」と思う心は、戦後の人は
 誰でも持っていますが、そのいざという時、
 みんなでちゃんとその心を発表できるか  
 どうか、そこはまだ判りません。  

 今、反戦の署名をしていても、
 次第に法律が変わってきたり、
 情勢が変わってきたら、
 みんなビビってしまうかもしれない。  

 その時こそ我々の憲法は
 何よりの力綱なのです。  

 民主主義というのは、自分の心を
 自分でちゃんと知ること、  
 それが第一で、また、それをはっきり
 表現できることだと思うのです。  

 第二には相手の心がわかること。  
 
 第三に、共に協力し進歩していくこと。    

 この3つが揃ってはじめて本当の
 民主主義なのではないかと思います。  

 田舎で暮らしているとき、
 時々民主主義とは何かきかれ、  
 また私もそれがどうしたものであるかを
 確かめようと思いましたが、
 人にきくと言下に  
 「それは基本的人権の尊重です」と
 答えがかえってきます。  

 「基本的人権の尊重」なんて、
 それはどうしたことをすればいいのか、
 日常的には又さっぱりわかりません。  

 しかし繰り返し自分の過ぎ越し方を
 振り返って考えたり、しようとして来たことを
 考えると、私はそれを求めようとして  
 来たのではなかったか。  

 そして結局以上のような三つの項目に
 つづめてみたのです。  
 そして民主主義、民主主義と蝉が鳴くように
 云っても、そこが十分覚悟できないと
 何にもならないのではないかと考えました。  

 これらは私らが進んできた中でも
 また新しい課題であって、  
 一人一人がやはり取り組まなければならない
 問いなのです。  

 自分自身の思いを確かめあい、
 その上にも相手の人、特にみじめな人の
 思いも汲み取れる人、
 そしてその人々とも一緒に全体が一階段ずつ
 進んでいけるとしたら、  
 これこそ本当の民主主義ではないでしょうか。  

 決して人権を得たから
 これですんだというものではなく、  
 平等になったから
 それでいいというものでもなく、  
 常に新しい問題について
 求め考えていくものではないでしょうか。  

 歴史はそれを示してはいないでしょうか。」

日本人全てに対して
この国の有りよう、行く末を一人一人が
きちんと考えましょうという真の命題を
与えられた言葉だと思います。

永瀬さんは、この言葉を
戦後の大きな混乱の中で
戦争の惨めさとこれからの希望を持ち
人々の心が通い合う姿を願って
話されたことでしょう。

日本は、敗戦国の惨めな状況から、
急成長し続けました。
食糧や物が満ち溢れ、豊かになりました。

しかし、心は・・・
豊かではないと多くの人たちが思う現代日本。

現在の姿をどう修正していくことが必要なのか、
私たち大人がすべきことは何か。

課題は大きく、いくつもあります。
永瀬さんが戦争直後に詠まれた
「美しい国」の詩の最後には、こう書かれています。  

”よい想いで空をみたしましょう   
 心のうちにきらめく星空をもちましょう”

まさしくこの想いで次代を引き継いでいく
子どもたちの将来を 考え、
この国がかつて自然も人の心も美しいもので
あったように 再び取り戻していかねば
ならないと思います。

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「美しい国」          永瀬清子    

「はばかることなく思念(おもい)を  
私らは語ってよいのですって。  

美しいものを美しいと  
私らはほめてよいのですって。  

失ったものへの悲しみを  
心のままに涙ながしてよいのですって。   

敵とよぶものはなくなりました。   
醜(しう)というものも恩人でした。   

私らは語りましょう   
語りましょう 
手をとりあって   

そしてよい事で心をみたしましょう。  

ああ長い長い凍えでした。  
涙も外へは出ませんでした。    

心をだんだん暖めましょう  
夕ぐれで星が一つづつみつかるやうに  
感謝と云う言葉さへ  
今やっとみつけました   

私をすなおにするために   
貴方のやさしいほほえみが要り   
貴方のためには私のが、  
ああ夜ふけて空がだんだんにぎやかになるように  
瞳はしずかにかがやきあいましょう  

よい想いで空をみたしましょう  
心のうちにきらめく星空をもちましょう」
 

1948年(昭和23年2月)作




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