金曜日, 8月 17, 2007

「愛に包まれてきたことへの大きな感謝」-☆森のクマさん☆

15日は62回目の終戦記念日でしたね。
戦没で亡くなられた方たちを追悼すると共に真の世界平和の
実現を祈ります。


私は今週、夏期休暇で日曜から埼玉の実家へ帰省していました。
実家では書棚の整理をする時間が少しありました。
幼少時代に読んだ本の多くを両親が残してくれており、
懐かしいものを多く見ることができました。

古いアルバムも残してあったのですが、その中に私が
生まれたときの育児記録がありました。

ちょうど遊びに来ていた妹はその育児記録のことを知って
いましたが、私は自分が過去に見た記憶がなく、おそらく
初めて開くのではないかと思いました。

中を開くと、最初の頁には万葉集に収められている
山上憶良の歌があります。

「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も 
 何せむに 
 まされる宝子にしかめやも」


となりの頁には、”命名”という題が上に書かれて
私の生後まもない頃の白黒の写真が貼り付けられ、
命名者に父、命名日、命名の由来が母の字で書いてあります。

「お兄ちゃんがおばあちゃんの幸をもらったので、
 和ちゃんにも幸をもらい
 パパが「和を持って幸いあれ」と願って
 つけてくれました」
 
次の頁をめくると、生まれた日の日記とあり、
生誕時に体重が4550キロあって産婦人科医院始まって以来の
大きな赤ちゃんであったこと、臍ノ緒が首に巻きついていたので
酸素吸入されたとあります。

当時、父は27歳、母は23歳で上の兄はまだ1歳10ヶ月。

そして、当時の家の状態 という頁では、こう書いてありました。

「和ちゃん これから貴男の事をママは和ちゃんて
 呼びます。

 ハイって元気な声がハネ帰ってくるのは、
 まだ先の事になるでしょうけどね。
 
 今ね和ちゃんのパパのお仕事はとっても朝の早い
 仕事なの。だから出張が多いの。

 ママとお兄ちゃんは淋しいけどがまんしているの。
 生活のためなのよ。
 何事もそしてあなた達を幸せにしようとパパは張り切って
 いるのよ。
 だから出張が多いの。

 あなたにも今におおきくなって一人前になると
 その事がきっと分かるでしょう。

 そしてあなたの奥様になる人にも今のママの気持ち
 分かるでしょう。

 だから今はママとお兄ちゃんとあなたと3人で
 パパのいないこの家を守りましょう。

 あなたのパパはものすごく理解のある人です。

 そして勇気のある人なのです。」


出産後の記録では、8日目に退院し、12日目~21日目の間
父が出張とあります。
そして、12日目の横には
「パパ出張に行く。お兄ちゃんがむずかる。
 和ちゃんも泣き出す。
 ママも泣いてしまいました。」

そして16日目では
「あまりおっぱいをのまない。
 いつも60~80くらい。生まれの割合に少ない」


21日目
「今日から床を上げる。普通の仕事をする。
 でも腰が痛む。
 パパ出張より帰宅する。和ちゃん大きくなったって。」


その後の頁では各月の記録があり、
2才、3才での白黒写真が貼られていました。


父はこの9月に70歳になります。
何もないところから一代で会社を起こし、
多くの苦労を乗り切りながら、
家族を幸せにするために頑張って働き続けてきました。
家族を守るために、精いっぱい生き続け、親父の偉大な背中を
見せ続けてきてくれました。
常に家族、子ども達、孫達のことを細々としたことまで、
気にかけてくれ、母を通してアドバイスをくれています。

私が環境問題に関心を持ち、取り組むようになった
最初の原点は父のこの仕事にあります。
「日環エンジニアリング株式会社」
http://www.nikkan-ks.com/index.htm

そして70歳になることを大きな節目として、父は経営の
第一線から引退、兄に譲ります。
4年ほど前から行っている有機での野菜づくりに
ますます励んでいくことでしょう。
まさしく大地と共に生きる父です。

母は、6月で66歳になりました。
厳しい父についていくのは本当に大変であったろうと
物心がついた頃から思っていましたが、常にやさしい人。
世の中で人として恥じない生き方を説き、どんな時でも
常に私の応援をし続けてくれる母です。

現在の仕事が決まり、最初は派遣の時給からと話した私に
母はこう諭しました。
「お金は後からついてくるものだよ。
 与えられた仕事を精いっぱいにやることが大切。
 その中で周りや他の人たちからの信頼を得ていくことが
 できていけば、お金は後からついてくるよ」
と。

母のこの言葉を胸に刻み、その後私はプロパーとなり、
現在は環境社会貢献の仕事をまかされるようになっています。


私は今42歳。
こうして生きてこられたのは、
厳しく偉大な父と心から優しい母の大きな愛情に
包まれてこそと
心から感謝の気持ちでいっぱいです。
 
どうかいつまでも元気に長生きをしてください。

愛する父・母へ

                           和幸


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金曜日, 8月 10, 2007

「大事なのは距離ではなく方位である」-池澤夏樹

星野道夫氏が、96年8月8日、 カムチャッカで亡くなってから早11年。
尊敬するミチオさんを偲んで、親友である 池澤夏樹氏の言葉を贈ります。

「北極圏に属するポイントホープという村のクジラ漁の話を  
星野は「アラスカ 光と風」の中に書いている。  

彼らは広い北極海に出て行ってクジラを捕るわけではない。  
春先、海を覆っていた氷が緩み、細い水路が現れる。  
そこをクジラが通る。  

クジラはしばしば海面に出て呼吸しなければならないから  
この水路を通過するわけで、狭いところだからこそ  
ヒトが小さなウミアックで行っても追いついて捕ることができる。  
技術的には限界まで洗練されているが、  
しかし自然は多様に変化するし、クジラは大きい。  

捕れるか捕れないか、不確定要素が大きい。  
全ての要素がヒトに味方した時だけ、ヒトはクジラの恵みを  
自分達のものにできる。  
水路の幅が広すぎも狭すぎもせず、  
気まぐれなクジラがたまたまそこを通り、  
小さなウミアックが追いついてうまく仕留められた  
場合だけ、ヒトはクジラの恵みを自分達のものにできる。  

それはもう幸運と呼んでもいいほどのことだ。  
星野は、クジラが捕れたという報せを聞いて  
一人で海に向かって歌い、踊り、泣く老婆の姿を描写している。  

村の全員を潤す幸運への感謝であると同時に、  
クジラそのものへの感謝でもある。  

ヒトの視点から見ただけでは、アラスカの自然の  
全体像は捕らえれない。  
ヒトの幸運がすべてとは星野は見てないし、  
ポイントホープの住民もそうは見ていない。  

生命は個人において(あるいは個体において)完結するものではない。  
陸地だけでなく海の中も空も含めて、  
生物たちみんなが棲んでいる領域の全体が生きているのだ。  

しかもこれは今の時点についてだけ言えることではなくて、  
太古から遠い未来まで、神話的な時間と空間の広がる限りそうだったし、  
これからもそうなのだ。  

これがぼくたちと彼ら(ポイントホープの住民、クジラ、ホッキョクグマ、
アザラシ、魚、鳥、そして星野)の世界観のもっとも大きな違いである。  


「ナヌークの贈り物」という星野が書いた絵本がある。    
吹雪の中で眠った少年が、ナヌーク(ホッキョクグマ)から  
よき狩人になるための大事なメッセージを教えられる。
 
繰り返しの多い詩的な言葉は、食うと食われるの連鎖によって  
自然界が構成されていること、  
「いのち」が個体から個体へと伝えられるものであり、  
死はそのまま生へとつながっていることを教える。  

言ってみればすべての生き物は大きな生命のプールから  
自分のために一杯を汲み出してしばらく生き、  
やがて死ぬときにまたプールに生命を返す。  

大事なのはあなたやぼくの目の前の一頭のホッキョクグマや  
アザラシではなくて、その生命のプールであり、  
この地域に生きるもの全部を含めたシステムなのだ。  

いつか少年とクマが出会うときには、  
「お前がいのちを落としても、わたしがいのちを落としても、どちらでもよいのだ」  
という言葉がクマから少年に伝えられるのだ。  

それを承知の上で、各個体はそれぞれに自分をなるべく  
長生きさせようと努める。  
手を抜くことはゆるされない。  

オオカミに追われたカリブーの子は必死で逃げるし、  
餌が少ない夏にもシロフクロウは精一杯の餌を巣に運ぶのである。  

それでもやってくる死を、その時は従容と迎える。  
個体を放棄して、全体を受け入れる。    
星野が多くの写真と優れた文章に託してこの真理を教えてくれても、  
ぼくたちはもう彼らの世界に戻ることはできない。  

ぼくたちはあまりに遠くまで、物質文明の先の方まで来てしまった。  
ただ、少しは事態を是正して、少しはましな方にもってゆき、  
一人ひとりの身勝手を忘れて生命の全体を考えるために、  
星野の残してくれたものを読むことはできる。  

かわいいアザラシの赤ん坊をかわいいと思って見ているだけでも
星野の考えは染み込んでくる。  

彼の写真と文章はいわば目印としての北極星である。  
いくら歩いても北極星に行き着くことはできないけれども、  
しかし星を目印に北へ歩くということはできる。  

大事なのは距離ではなく方位なのだ。」 

深く共感する言葉です。

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