月曜日, 11月 19, 2007

「標高3700mの展望より持続可能な未来社会を望む(中国・雲南省・三江併流森林生態系保全)③」-☆森のクマさん☆

10月24日(水)
 朝方早く目が覚める。何時だろうと目覚ましに手を伸ばす。
 5時過ぎ、薪を割る音が聞こえてくる。
 おそらく郷長を務めるという張さんの息子の仕事であろう。

 7時に起床し、部屋の外に出る。
 朝の冷気が冷たく感じる。
 家人が気を利かせて、お湯で満たした大きなたらいを
 出してくれる。
 顔を洗うとさっぱり。昨日風呂に入れなかったので、顔を
 洗うだけでも気持ちがいい。
 今日は山小屋泊まりなので、風呂はやはりなしだろう。
 当たり前のように、毎日風呂に入れることの幸せを思う。

 朝食を摂り、9時過ぎに出発。
 これから4時間ほど山の中を歩く予定。
 10時間コースもありますが慣れていないので、こちらの
 コースがいいでしょうと言われる。
 もちろん否はない。
 かつては登山三昧の日を送っていた古き思い出でもあるが、
 現在の会社で働き始めてから早7年。
 暫く登山は無沙汰であったため、久しぶりの山行に不安と期待。

 しかし、張さんの話では、日本人がこの道を歩くのは
 貴方が初めてのはずだと言われて、元気が出る。
 天気は明朗快晴で湿度は高くなく、ちょうどいい陽気。
 しかし11月に入れば雪も降り始めてくるという。

 これから目指す金絲猴の観測ステーションは標高2700m。
 村の標高が2400mほどなので、さほど上がっていくものでは
 ないが、途中々での起伏がかなりあり、また渓流がいくつもある中、
 倒木を向こう側に倒しただけの橋をいくつも越えてゆく。

 針葉樹と広葉樹の混在した見事な森林である。
 途中には民家がぽつんと現れ、なぜこのような人里離れた所で
 暮らしているのだろう。
 生活必需品の買出しの時に最寄の村の売店まで
 歩いて2時間以上かかるような中で生活している老夫婦の人生
 を想った。

 道の途中で幾つもの巨樹を目にする。大人が3人腕をまわして
 ようやく届くほどの幹周と聳え立つ高さ。
 かつて林業の盛んな頃はこのような巨樹が相当切られ、
 市場に出ていった。

 これからこの地域で目指すのは、樹木の伐採ではなく、林産物を
 主にした収入確保である。
 同行の和氏や張さんなどスタッフ達は、零芝やその他の薬用価値の
 高いキノコ、植物の根などを教えてくれる。
 日本でも人気のマツタケも含めて、森林生態系の恩恵を活かしながら
 栽培していく試みも行っているという。
 
 休憩を挟みながら4時間ほど歩き、ようやく金絲猴の観測ステーション
 に到着。
 一足早く着いた村の若者2名が川で野菜を洗い、遅い昼食の準備を
 してくれていた。 
 昼食後、打ち合わせを行い、ゲストルームという隣接の小屋に行く。
 まだ建てられて間もないようであるが、建て付けはあまりよくなく、
 部屋の戸の開閉が難であった。

 夜になると、外では寒気を感じるようになってきた。
 日中と違い、これから温度はマイナスになるという。
 日本から持ってきた防寒着を着込むが、同行のスタッフや村の若者は
 せいぜい1枚上に羽織った程度である。
 ふだんの環境の違いなのだろうが、都会で空調の調整に慣れている
 こちらと彼らの逞しさの開きに自省させられる。
 
 夜10時頃就寝。電気のない真っ暗な部屋で寝袋に潜り込む。
 明日は、朝7時に出発し、標高3700mの展望点に行く。
 1時間半の急峻な登山を想像してか、寝袋の外から入る寒気に顔が
 寒くてかなかなか寝付けなかった。


10月25日(木)
 朝7時前に起床し、まだ真っ暗な中を登山開始。
 気温はマイナス5度。とにかく寒い。
 昨日、張さんが即席でこしらえてくれた竹の杖がとても役に立った。
 想像以上の急で狭く、霜で道が滑りやすく足場の悪い道。
 これから一気に1000mを登るのだ。
 
 息をこらしながら、体を持ち上げては登り、歩く。
 急登を続け、しばらく行くと道の間から周囲の山々が目に入ってきた。
 昇り始めた太陽に照らされて、美しい。
 紅葉の葉が朝日に輝いている。
 苦労したものに与えてくれる天の恵みに深く感謝である。

 美しい山脈の景色に励まされながら歩き続け、ようやく展望点と
 よばれる場所に到着。
 四方八方に広がる老君山の山脈の各山塊の頂上・山容や遠くに
 玉竜雪山も見える。 
 周囲の森林は、見渡すばかりのみごとな原生林。
 ここに金絲猴の群れが生存しているのだという。
 姿は見えねども、彼らの存在を確かに感じた。
 神の恩賜による造形の美。眩しい光と神々しい緑の有り難さ。
 ただひたすらに私は眺めるばかりであった。

 
 この老君山・生態村にて始まった
 森林生態系保全と地域住民の生活向上を目指した
 持続可能な未来社会づくりは、まだ第一歩である。

 しかし、この地をこうして訪れ、多くの関係者に出会う中で
 この土地で生き続けていくことを願う希望と熱意に会い、
 素晴しい大自然に触れることができた。 
 多くの協力者と共に、このプロジェクトは成功への道を歩んで
 いくことであろうと確信した。

10月28日(日)
 8日間に渡る視察を終え帰国。 


「私たちが日々関わる身近な自然の大切さとともに、
 なかなか見ることの出来ない、
 きっと一生行くことの出来ない遠い自然の
 大切さを想うのだ。
 そこにまだ残っているというだけで
 心を豊かにさせる、
 私たちの想像力と関係がある意識の中の
 内なる自然である」 
         星野道夫





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