水曜日, 11月 14, 2007

「老子の山と森林渓谷に囲まれて生きてゆく先住民の村(中国・雲南省・三江併流森林生態系保全)②」-☆森のクマさん☆

10月23日(火)
 麗江官房飯店をパジェロにて出発し、一路「老君山」と最奥の村
 「生態村」を目指す。
 市街地を抜け、高山帯の道から山頂に白き雪を持って聳え立つ
 美しき玉竜雪山を見ながら、ひたすら先を目指す。

 かつてこの辺り一帯は、「ナシ古王国」の一部であったという。
 往古栄えていた王国の名残がどこかにないかと考えながら、
 車に揺られて移動を続ける。


 和氏の運転に、私の他に同乗者は麗江植物研究所の女性研究員。
 生態村の所属する郷(県の管轄単位)の役場にて、県の参議院議長や
 各部門部長などと合流し、一緒に「生態村」へ行き、昼食をとり
 懇談を行う。

 ナシ族自治県である国竜県にとって、森林生態系保全と県民の
 生活向上は第一の課題とされている。

 中国では98年6月から8月まで、長江・松花江・嫩江で大洪水が
 発生。この被害は、1666億元と巨額なものとなった。
 
 近年の目覚しい発展の一方で、森林乱伐、草原の出鱈目な放牧、
 魚介類の乱獲により、中国の自然生態系は悪化し続けている。
 持続可能な発展を目指し、北京の中央指導部は環境保全に関する
 一連の措置を発令、人々の環境保全の意識は徐々に高くなりつつ
 あるというが、やはり発展重視の中でどれだけ浸透しているのか
 不明である。
 
 この洪水後、国務院は長江上流の自然林の伐採を禁止する命令と共に、
 「天然林保護プロジェクト」(略称「天保プロジェクト」)を発した。

 雲南省は、その大半を高原と山地で覆われる土地。
 全省の94%は山地、その内の64%が林業用地である。

 60年代から、国家建設のため、林業部と雲南省林業庁は次々に、
 森林伐採、木材加工や輸送を行う林業工業企業を設立。
 70年代末期までに、地方の林業工業や木材加工企業が次々と興り、
 多くの市や県では、林業が基幹産業に発展し、「木材財政」と
 呼ばれるほどとなった。

 伐採禁止、新プロジェクトの発動。
 長江上流域では、これまで伐採に携わっていた人々が、
 植林を行い、保全の担い手に変わった。
 この方策により、中国の森林生態系や資源は保全され、
 長江の水源は維持されることが期待される。

 しかし、森林を生活の糧としてきた多くの人々は、収入が激減し
 生活できる見込みの薄くなった村を若者達は離れ始め、過疎化が
 進みつつある。

 他所から入ってきたものたちによる盗伐、野生動物や
 貴重な薬用植物・キノコの乱獲、なども見られ紛争の目も
 見られ始めている。

 長期的で俯瞰的な視点により、地域住民の生活と
 地元の森林生態系保全とをどのように両立させるのか、
 とても重く大きな課題である。


「生態村」は標高2400メートル程に位置する。
 村の範囲はとても広く、家々は離れて点在し、中には山奥にて
 生活する村人もいる。
 ここの暮らしは、30年ほど前とさほど変わらないのかもしれない。
 ただテレビが入り、映し出されるニュースや番組を通しての
 中国社会の著しい変貌ぶりに村の古老達は驚いていることだろうと
 思った。 

 その夜、私とAGAスタッフなど8名は村の旅館に宿泊。
 旅館といっても、細かく部屋が区切られた2階建ての建物に、
 土床の上にベッドが一つあり豆電球で照らされるだけの
 簡素な部屋の作りである。
 風呂はなく、トイレは外の星空を見ることのできる小屋にあった。

 食事は、離れの家の中。
 ここには懐かしい竈が2つあり、家人が大きな鉄鍋で様々な料理を
 拵えていた。
 家人は5人。家長であり、かつては猟師で現在は内外の研究者
 などを山にガイドする張さんとその妻、村の役人を務める息子夫婦に
 生後まもない可愛い赤ちゃんが居住している。

 張さんはかつて山に入り、金絲猴の猟も行っていたという。
 今は自然環境保全を大事に思い、ガイドをして研修者達に地元の
 森林の生態を説明する役に変わった。
 なぜ変わったのか私は聞いてみた。

 彼はこう語った。
 「かつて金絲猴を狩猟していた頃は、この猿がいくらでも
  山にいるものだと思っていたのです。
  他の動物たちにしても同様でした。

  ところがある時、この村を訪問した外国の研究者に言われたのです。

  「君達が捕っている金絲猴は、野生の生息数は3千頭ほどしか
   いない。雲南省の他、中国の湖北省、陜西省、甘粛省、四川省の
   高山帯などにしか見られず、絶滅がとても危惧されているとても
   貴重な生物なのだ」
と。

 それほど貴重な動物を捕ることに罪悪感を感じた張さんは、
 その後野生動物を保護する側に立場を変え、村での持続的な森林保全に
 協力するリーダーの一人となっている。


 張さんを含めよく働く家人に感心しながら、私はかつて日本でも
 このような素朴な生活が各地で見られていたのだと思いながら、
 社会の本当の豊かさ、人間の本当の幸せを考えさせられた。

 夕食後、焚き火に当たりながらお茶をご馳走になる。
 明日は、山の中をたっぷり4時間歩き、金絲猴の観測ステーションに
 泊まる予定だそうだ。
 老君山の各所に聳えるという巨樹達に思いを寄せながら、
 夜9時頃早々に床につく。


**************** 
「老君山(Laojun-shan Mts.)」
 老子=大上老君の名前を持つこの山は、大理州と麗江地区の境界に
 位置し、標高4,247mを頂点とする山塊で、自然保護区に指定されている。
 
「ナシ古王国」
 雲南、四川、チベットと隣接するある地域に、神秘につつまれた地が
 ある。この地に100年ほど前に踏み込んだ西洋の探検家や学者たちは
 ナシ古王国と呼んだ。
 その都、麗江はチョモランマ山脈の果て、青海・チベット高原の南を
 横断する山脈に沿った「三江併流」内にある。
 壮麗な山や雄大な川が流れ、神韻縹渺とした山々には麗江の大自然霊が
 宿り、ナシ人の勇敢かつ多情な魂を孕んで来たという。


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