日曜日, 3月 09, 2008

「才覚を持つものと発掘するものとの良縁」-森口華弘

先月20日にお亡くなりになった重要無形文化財保持者(人間国宝)で
京友禅作家の森口華弘(もりぐち・かこう)さんの素晴らしい話を
聞きました。


「斬新な意匠で、現代的な息吹を友禅の世界に吹き込んだ重要無形文化財
 保持者(人間国宝)の森口華弘さん。

 森口さんが学童のころ、図工の時間に「みかんの絵を描きましょう」と、
 担当教師が生徒に指示した。

 森口さんが描いたのは、
 画用紙からはみ出るほどの大きなみかんだった。

 教師はスイカではなく、みかんを描くようにいった。
 「みかんはもっと小さなものでしょう」。

 森口さんは、
 「みかんはとても甘くておいしいけど、小さい。
  だからスイカみたいに大きなみかんがあればいいなあ」と
 思って描いたという。
 でもそれはいわなかった。
 

 次にまたやってきた図工の時間。
 今度は汽車を描くようにいわれた。

 森口さんは画用紙の中央やや右側に、上から下に伸びる
 日本の線を描き、それに短い横棒を入れていった。
 線路である。

 その右手には、たわわに実る稲穂で埋め尽くされた田を、
 左手には麦畑を描いた。

 面積では右の稲が七、左の麦が五、線路部分が三という
 構成だった。

 「汽車を書くようにいったのに、この絵には汽車がないじゃないか」と
 教師から言われた森口さんは、
 「汽車はもう先に行ってしまった」と答えた。

 そんなことがあって、二枚の絵はどちらも、
 甲乙丙の「丙」になった。
 おそらく、トンチンカンな絵しか描けない子という評価を受けたのだろう。


 そんなある日のこと、臨時に赴任してきた美術の教師が
 森口さんの絵をじっと見ていった。

 「この絵はおもしろい。あなたは夢を描きたかったのか?」

 森口さんはうなずいた。
 大きくて甘いみかんが欲しかったし、汽車が通り抜ける
 のどかな風景が好きだったからだ。

 「それなら丙でなく、甲をあげよう」と臨時の教師から言われた。

 図工で、美術の先生から「甲」をもらえた。
 ひょっとしたらぼくには、絵の才能があるのかもしれない。
 それが絵を描くきっかけになったと、
 森口さんは振り返った。」


京友禅をプロとしてやり続け、人間国宝にまでなった森口さんには
才覚がありました。

その才覚を発掘したのは、臨時に赴任してきた美術教師です。

才覚があっても目利きがいなければ才覚は発掘されず、
開花しないまま埋もれてしまうことをよく物語っていますね。


無限の可能性を持つ子供の親として、
深く考えさせられる話です。


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