日曜日, 6月 29, 2008

「長すぎる雌伏の時を終えて」-ジョセフ・E・スティグリッツ

先月、「第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)」が横浜で開催されました。

私は、仕事で携わっている森林生態系保全のプロジェクト視察で
昨年の暮れ、西アフリカにあるガーナ共和国へ2度目の訪問を行ってきました。

現地のプロジェクトは、 森林の伐採による非持続的なカカオ栽培を
行っていた原生林の周辺にある村の人々に、
森林を伐らず農薬や化学肥料にも頼らない持続的な森林農法での
カカオ栽培を勧めながら、
野生動物による自然の力で森林回復を進めているものです。

この取り組みにより、4年の間で予想以上の成果が上がり、
カカオの収穫量が増え、 農民の方たちの収入が比例して増えています。

収入が増えて何が一番よかったか、 という私の問いに、
村の人々は皆異口同音に
「子供を学校に通わせることができるのが何よりも嬉しい」、
そう答えていました。

何かモノを買えるので嬉しいという人は、
一人もいなかったのです。

この取り組みとはまったく別に、
ガーナ自体の経済成長率は年々高く伸びており、
首都アクラでは街のあちこちで ビル建設などの現場が見られました。

そして、この成長への胎動は、ガーナのみならずアフリカ全体に
広がってきているようです。

BRICSを始めとする新興国の台頭などから、
今世界中で各資源の急激な需要が起きており、
アフリカは原油やレアメタルなど様々な天然資源を豊富に持つ
地域として、注目を浴びています。

日本政府は、今回のTICADではODAの倍増を表明しており、
国内企業も資源高を背景に経済成長が加速していけば、
社会インフラや消費財の需要拡大が見込まれるとして、
アフリカ市場への進出が本格化してきています。

しかし、一方で、貧困や医療の問題はなかなか解決に進んでおらず、
アフリカ地域内での経済格差、各国内での所得格差はますます
広がってきています。

資源を持つものと持たざるものとの格差。
ODAを倍増しても、現地のインフラを整備しても、
その恩恵を受けるのは、アフリカと日本での一部の関係者ばかり。

アフリカの多くの国では、多部族が一つの国に混在しており、
政権をとった大統領の身内や部族が優遇され、
そこから生まれる格差が、内戦を呼び国の混乱へとつながっています。

もともと、欧米の植民地化が原因で、資源統治を重視して
部族の境界を無視して土地の区割りを行ったことから
第二次世界大戦後に各国の独立の際に、
部族間の対立が生まれているものです。

混乱で傷つくのは、昔から寄り合って貧しくとも協力して生きてきた
小さな集落の人々たち。
お年寄りや子供、力のない人々。

どの国であっても、同じ地球に生まれてきた生命をもつ人間として
個人の尊厳が保たれなければならないはずです。

経済全体が成長すれば社会の隅々まで利益が行き渡るという
トリクルダウンの経済学は、きれいごとの言葉でしかないというのは
多くの方がわかることでしょう。

曽野綾子さんによれば、
「日本では、今や高校の卒業生のうち、専門学校・短大などを含めれば  
7割の若者たちが大学へ進学しています。  
親に金がなくても、ほんとうにやる気があって成績もよければ、  
必ずどこかで奨学資金が受けられるのです。  

 しかし、世界の多くの土地では、子供たちは、小学校さえまともに  
卒業できません。  
親は子供が学校に行くより、労働をして生活を支えてくれることを  
期待しています。  

 親が高利貸しから金を借りていて返せなければ、  
子供は親共々、農奴的強制労働に使われます。  
貧困を理由に子供を捨てる親がいれば、  
子供たちは冬の寒さを避けて下水道の中で子供たちだけで  
身を寄せ合って越冬します。  

乞食や盗み、或いは児童労働に当たる物売りや農業の手間賃稼ぎに  
行って、今日食べる分くらいは稼いでおいでと言われる子供たちは  
少しも珍しくない。」

ノーベル賞経済学者のジョセフ・E・スティグリッツ氏は、
「現在進められているグローバル化で、恩恵に浴すのは
ひと握りの富裕層だけである。  

たしかにGDPの統計値はよく見えるものの、 伝統的生活様式や
基本的価値観は存亡の危機に立たされている。  

なかには、わずかな利益とひきかえに莫大なコストを押しつけられる
国々も存在している。  

これはグローバル化の本来あるべき姿ではない。  
金と力を持つ人々のためではなく、  
最貧諸国を含む全世界の人々のために、  
われわれはグローバル化をうまく機能させることが可能なのだ。  

もちろん、簡単な作業ではないし、一朝一夕に成し遂げられる
ものでもない。  

しかし、われわれは長すぎる雌伏の時を過ごしてきた。  
今こそ始める時なのだ。」

今回のTICADのテーマは、
・成長の加速化
・平和の定着
・環境問題、気候変動問題への取り組み

日本の支援が、格差の上にある者だけを対象にするのでなく
アフリカの土地に住む私たちと同じ命を持つ全ての人々に
夢と希望を与えるものにならなければ、
真の支援ではありません。

ぜひそうなるように願っています。


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水曜日, 6月 18, 2008

「人づくりは木づくり」-細川重賢

国家100年の計は人にありといわれます。

国・地域・家庭の基盤である人材育成をいかに行なうか、
日本人としてのアイデンティティを見据えた上でのものでなければ、
漂流する日本の状態を食い止めることはできないと思います。

教育のあり方が社会の各所で議論されていますが、
「人づくり」というものの本質を踏まえたものではなく、
これまでの焼き直しをいかに行なうかという表面上のやりとりが
多いように見られてしかたがありません。

歴史に学ぶ、という大切な視点から、
一つの例を挙げましょう。

”江戸時代中期、
 肥後の国熊本の藩主であった細川重賢は、
 時習館という藩校を設立して、
 秋山玉山という人を初代校長に任ぜました。

 重賢は、玉山に
 次のようなことをお願いしたといわれています。

 「先生は国家の名大工であり、
  木づくりの名人だと思います。

  したがって、教育にあたっては、
  「人づくりは木づくり」
  と考えていただけますか。

  そのために、木配りを大切にしてください。」
 (木配り:学ぶ子が、杉なのか、松なのか、
      欅なのか、樫なのかなど、
      何の木にあたるかを確定するという意)”

木の種類により、
養育方法は異なるものであり、
施肥の仕方、剪定の仕方など全然異なるものです。

つまり、重賢は教育にあたって、
「一本一本の木の性格が異なるように、
 その木に見合った教育をしてほしい」
ということを依頼したのです。

画一化の弊害がとかく言われる中で、
人間というものの多様性を理解して
人材づくりを考えた重賢さんの素晴らしさを
私たちは現代に活かすべきでしょうね。


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