金曜日, 5月 08, 2009

「天いっぱいに子どもの星をかがやかせよう」-東井義雄

GWの前半は、埼玉の実家に行き
近場でゆっくりと過ごしました。
息子は歳の近いいとこ達に会えて
大喜び。ワイワイいいながら
家の中で、屋外の公園で
走り回って遊具で遊び、賑やかに
遊んでいる子どもたちの嬉しそうな
姿にとても癒されました。

尊敬する藤尾秀昭さんが以前紹介されていた東井義雄先生の
お話を紹介します。
東井先生は『日本のペスタロッチー』と呼ばれた名教育者。
これは、東井先生が68歳の頃に中学生を前に
あるお婆さんの話をしたそうです。

『私は主人が早くに亡くなりました。
 女の子一人の母子家庭だったんですけど、
 主人が亡くなってから、くず屋の仕事を続けて、
 女の子を養いました。

 幸い、小学校の頃は、いい子だ、やさしい子だと、
 皆さんから誉めていただいていたんですが、
 中学校になってから、ぐれ始め、
 とうとう中学二年の時には警察の
 お世話になるようなことになってしまいました。

 あのいい子だいい子だといわれた子が、
 なぜこんなことになったんだろうか、
 どう考えても分かりません。

 それが偶然わかったことですが、
 「いくら勉強できるからといって、くず屋の娘やないか」
 といわれたことが大きなショックになって、
 「お母さんがあんな仕事をやってるから、
  いくら勉強やったって、みんなからバカにされる」
 と考え、それからぐれはじめたということがわかりました。

 しかし、このくず屋の仕事をやめてしまっては、
 もう今日からの暮らしに困ってしまいます。
 かといって、ただ一人の女の子が、
 そんなことでは、亡くなった主人に申し訳ございません。
 長い間、ずいぶん迷いましたが、
 結局私の仕事をわかってもらう以外にはないと考えつきました。

 ある時、
 「お母さんが長い間こんな仕事をやってきて、
  足腰が痛んで、どうにもこうにもあの下からの坂道、
  家まで車を引いて登ることができなくなってしまったんだ。
  すまんけど、あの下のポストのところまで、
  明日の晩迎えに来てくれないか」

 「ボロ車の後押しなんかイヤだ!」
 思った通り、はねつけられてしまいました。

 「イヤだろうな、ボロ車の後押しなんてイヤだろうな。
  でもお母さん、足腰がもう痛んで、
  どうにも車があがらなくなってしまった。
  頼むからあのポストのところまで、迎えに来てくれないか」

 いくら頼んでも、
 「ボロ車の後押しなんてイヤだ」
 「イヤだろうな、ボロ車の後押しなんて、イヤだろうな。
  でもな、6時には間違いなしに帰ってくるからな。
  あのポストのところまで迎えに来てくれんかい」

 「じゃあ、6時ちょっきりやで。
  すこしでも遅れたらよう待たんで』
 ということで、どうにか承知してくれました。

 あくる日、車を引いてポストのところまで帰って来ると、
 ポストのかげに、恥ずかしそうに、
 しゃがんで待っていてくれました。

 そして、後を押してくれたんですが、
 車を引きながら、このボロ車に顔をそむけながら、
 どんな思いで後押ししてくれているかと思うと、
 こんな仕事やってきて、
 そして娘にまでこんなみじめな思いをさせると思うと、
 たまらん思いでしたが、おかげさまで
 家まで車を引いて登ることができました。

 「あんたのおかげで、今日は久しぶりに
  車を引いて帰り着くことができた。
  明日もすまんけどな、お願いするよ」

 そのあくる日も迎えに来てくれていた。
 そんなことが五日ばかり続いたある日、
 ポストの倍のところまで迎えに来てくれていました。

 後押しをしながら、
 「お母さんの仕事って、大変なんだな!」
 と叫んでくれました。

 「お母さんだって、この仕事が好きなはずはない。
  でも私のために、この仕事、
  足腰が動かなくなるところまで頑張り続けてくれた。
  私のために。だのに私はお母さんを恨むなんて」

 気付いてくれていたんです。
 そのあたりから、立ち直ってくれました。
 今ではおかげさまで、いい母親になって、
 二人の子どもに恵まれているんですが。
 と聞かしてくれました。』

藤尾さんによると、この話の後に東井先生は
こう語ったそうです。

 『自分を生かしてくれるものに、目が覚めてみるとね、
  ぐれたりなんか、自分勝手な生きざまが
  できなくなってしまうんですね。
  願いの中に自分が生かされている。
  どうかそのことを一つ味わっていただきたいんです』

常に子どもの側にある教育を目指し、
命の不思議、命の素晴らしさを説いてきた
すばらしい教育者を思い、胸がいっぱいになります。

『どのこも子どもは星
                 
 どのこも子どもは星
 みんなそれぞれがそれぞれの光をいだいて
 まばたきしている
 ぼくの光を見てくださいとまばたきしている
 わたしの光も見てくださいとまばたきしている
 光を見てやろう
 まばたきに 応えてやろう
 光を見てもらえないと子どもの星は光を消す
 まばたきをやめる
 まばたきをやめてしまおうとしはじめている星はないか
 光を消してしまおうとしている星はないか
 光を見てやろう
 まばたきに応えてやろう
 そして
 やんちゃ者からはやんちゃ者の光
 おとなしい子からはおとなしい子の光
 気のはやい子からは気のはやい子の光
 ゆっくりやさんからはゆっくりやさんの光
 男の子からは男の子の光
 女の子からは女の子の光
 天いっぱいに
 子どもの星を
 かがやかせよう

 「東井義雄詩集」より』


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