水曜日, 9月 16, 2009

「「一日」を中心に生きる」-酒井雄哉


先日、酒井雄哉師の「一日一生」
読みました。
師は天台宗の大阿闍梨。
かつて比叡山千日回峰行を二回
行った行者として知られています。

1926年に生まれ、太平洋戦争時、
予科練へ志願し特攻隊基地・鹿屋
で終戦を迎えます。
戦後はラーメン屋や菓子屋、証券会社代理店など職を転々と
しますがうまくいかず、縁あって40歳のときに得度。
比叡山延暦寺に入り、明治時代に死者が出て以来中断していた
常行三昧という厳しい行を達成します。

そして約7年かけて約4万キロを歩く荒行「千日回峰行」を開始。
(不動明王と一体となることを目指す行で、十二年籠山行を終え、
 百日回峰行を終えた者の中から、さらに選ばれたものだけに
 許される行。
 行者は途中で行を続けられなくなったときは自害する決まりで、
 そのために首をつるための紐と短刀を常時携行する。
 頭にはまだ開いていない蓮の華をかたどったヒノキの笠をかぶり、
 白装束(死に装束)をまとい、草鞋ばきといういでたち。
 700日目の回峰を終えた日から堂入りが行なわれ、無動寺谷明王堂
 で足かけ九日間にわたる断食断水断眠の行に入る。
 入堂前に行者は生き葬式を行ない、不動明王の真言を唱え続ける。
 出堂すると、行者は生身の不動明王ともいわれる大阿闍梨となり、
 信者達の合掌で迎えられる)
 
酒井師はこの「千日回峰行」を80年、87年の2度満行。
60歳という最高齢でやり遂げたもので、2度の回峰行を達成した
ものは1千年を越える比叡山の歴史の中でもわずか3人しかいません。

『よく、千日回峰行をすると、歩く距離は4万キロ近いので、
 「地球一回りしたことになるんですよ」っていわれるの。
 「阿闍梨さんは二度やったから、地球を二回回ったんですね」と。
 そういうふうにいわれると、本当に地球を二回、回ったのかなって
 思うけど、毎日毎日繰り返しているうちに、気がついたらそんな
 距離になったというだけのことなんだね。
 急に2千日歩いたのではなく、毎日毎日の積み重ねなんだ。

 たとえば僕は82歳になる。じゃあ何日生きてきたのかなと思ってね
 計算してみると、ようやく3万日を少し超えるくらいだった。
 80年だっていっても、たったの3万日しか生きていないんだね。
 そう思うと、自分達の命って、本当に短くてはかないものだなあと
 思うよね。
 地球が生まれて四十何億年とかっていうでしょう。
 なかなかイメージがわかないほど途方もないけど、その中の
 3万日なんていったら、霧や塵までもいかない、ふっと消えて
 しまいそうなかすかなものだよね。

 そんな小さな存在なのに、こうして大きな世の中に送り出して
 いただいたんだから、それこそ地球のため、みんなのためって
 考えないといかんなって思うの。
 こんな大きな地球だって、あと何億年たったら大きな流星が来て
 なくなっちゃうとか、寿命が尽きるとかいわれている。

 こんな小さな存在でも、せっかくこの地球に生を受けたんだから、
 地球の命がある間に、みんなが楽しく生きていく方法を考えたいと
 思うんだ。
 一つひとつの命は小さくても、みんなで心を一つにして考えること
 ができたら、やがては大きな力になるんじゃないのかなあって。

 80年といっても、地球の命に比べたらほんのはかないもの。
 八十何年生きたからどうの、これまで何をしてきました等ではなく、
 大事なのは「いま」。そして「これから」なんだ。
 いつだって、「いま」何をしてるのか、
 「これから」何をするかが大切なんだよ。

 朝起きて、空気を吸って、今日も目が覚めたなあってときにね、
 さあ何をするかなって思って、起き上がらなくちゃ。
 それが今を生きているっていうことと違うかな。
 たとえば、若くして亡くなった人の悲しい話を聞く。
 だけど、その人が一生懸命生きて、世の中の人たちになるほどなあ、
 っていうような何かを残して亡くなったのであれば、それは
 素晴らしい。
 
 大きな存在から見れば、10年も80年もそれほど違いはないのかも
 しれないよ。
 だからこそ、何のために生きているのか、何をやって生きて
 いるのか。今なんのためにこの場所にいるのか。今何のために
 息をしているのか、ということを一生懸命考えなくては。
 とても無駄なことはできない。

 だって、だれにとっても、人生はほんのわずかな時間なんだよ。
 一生懸命、今を大切にして、今をがんばらなかったらいけないのと
 ちがうかな。』

回峰行という荒行の日々の中で得た「生きる」ということの意味を
酒井師は私たちにわかりやすく問いかけられます。
そしてこう励ましてくれます。
『大丈夫、明日はまた、
 新しい人生が生まれてくるから』



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